PORTAL TOKYO緊急情報(3)
 
 

2011年3月24日
2011年3月25日改訂1
2011年3月25日改訂2
2011年3月26日改訂3

放射性ヨウ素と小児の甲状腺ガン

 河田東海夫 原子力発電環境整備機構・フェロー


 チェルノブイリ事故のときには,原子炉の30km圏から,11万6千人の住民が避難させられた。避難は事故の20時間後から始まり,完了まで数週間かかった。30km圏はひどく汚染され,面積あたりのセシウムの放射能はほとんどの地域で1,500,000 Bq/m2以上(3月23日までに日本で検出された値の100倍以上)で,最も高い地域では5,000,000 Bq/km2になった。

 こうした地域やその周辺の住民は,事故直後から長い間,高濃度の放射性ヨウ素やセシウムで汚染された牛乳や食料を取り続けた。

 食物や飲み物を通じて体内に取り込まれるヨウ素は甲状腺に蓄積される性質があり,とくに放射性のヨウ素が蓄積した場合は,その部分が被ばくを受ける。その被ばく量が高い場合は甲状腺ガンになる危険性がある。特にその傾向は小さい子供ほど高くなる。

 チェルノブイリ事故の結果,避難民やその他の高濃度汚染地区の住民のうち,約4,000人の子供(15歳未満)が甲状腺がんになった。そのうち9人がなくなっている(15人という報告もある)。

 汚染がひどかった地域の一つにベラルーシのゴメルという地区がある。ここでは,約4,000人の子供のうち,3,400人が放射性ヨウ素により2 Sv(2,000,000マイクロシーベルト)以上の被ばくを甲状腺に受け,そのうち300人は10 Sv(10,000,000マイクロシーベルト)を超えた。また,上述避難民のうち,3歳以下の小児の甲状腺被ばくの平均値は1 Sv(1,000,000マイクロシーベルト)であったとの報告もある。

 先に述べた4,000人の子供の甲状腺ガン患者や,9人の死亡者は,このように極端におおきな汚染地区での,放射性ヨウ素の大量摂取による,非常に高いレベルの被ばくによって起きたものである。

 今,各地で小児の摂取限度を超える濃度が水道水や牛乳から検出されたことが報道され,小さい子供たちを抱えたり,妊娠中のお母さん方は大変な不安を抱えている。しかし,日本では摂取限度を超える水や牛乳を子供たちに与えることについては,行政が直ちにそれを控えるよう指示を出し,それに従った行動がとられている。

 ヨウ素の摂取限度については,その影響が甲状腺という局部にとどまり,しかも甲状腺ガンという特定のリスクに関係しますので,身体全体に広がって影響を及ぼすほかの放射性物質とは別の考え方で設定されています。飲量水,牛乳・乳製品,野菜類の3種類を1年間食べ続けても甲状腺への局部的な被ばく線量が年間33mSv(年間33,000マイクロシーベルト)を超えないよう設定されています(大人の場合)。

 この値は,前述のチェルノブイリでの被ばく事例と比べ,桁違いに小さな値であることがわかると思います。仮に摂取限度の5倍の汚染の飲量水と牛乳・乳製品,野菜類を1か月間食べ続けてしまった場合,限度オーバー分のヨウ素摂取による甲状腺被ばくの増分は11mSvです。この値は大人の摂取基準を基にした値ですが、それでも,チェルノブイリの経験から知ることができる実際の小児に対する有害レベルにくらべ,全く取るに足らない値です。

 

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